「食」を語る

テーマ1 ファーストフードとスローフード

 

 「ファーストフード」が来るところまで来て、こんどは「スローフード」という考えや主張が出てきました。

 

 

 

 当然であり、意義もあると思いますが……しかし、私は「ファースト」に対して「スロー」という主張をぶつけても、現代人の食と意識は変わらないと思っております

 

 「食」というものは、一時の流行ではなく、もっと永い視点で考えるべきだと思います。

 

 

  今日、食材は世界を流通し、料理法は世界中のそれが情報化されています。

 多様化は結構ですが、そんな中で、私たちは私たち日本人が「何をどのように」食べてきたかを忘れ、知らなくなっているのではないでしょうか?

 

 

テーマ2 食の本卦(ほんけ)がえり

 

 いそがしい現代人に、どうやって「早くて、きれいで、おいしい」食を楽しんでいただくか?

 

 私は、食の「本卦がえり」ということを思います。

 

 私たちの食材は、私たちの風土が産み出してきたものです。そして、料理法は、民族の歴史の中で磨かれてきたものです。(練馬のお大根には、お肉のブイヨンよりも、やはり「かつおとこぶのだし」が似合います。それが日本人の底流にある感覚です)。

 

 この風土と歴史について、知りたい、知らせたい。そして、そこに食の太い基軸を置きたい・・そこを掘り下げるのが「茶懐石」ではないでしょうか。

 

 「茶懐石」などというと、何か「特別」のものと思いがちですが、これこそ、日本の風土と歴史が生んだお料理です。

 早くも、ゆったりにもなり、素朴にも高貴にもなり、「日常(け)」にも「格別(はれ)の日」にもなります。

 

 私は、ひとつのおなべとフライパンで、茶懐石へのご案内をしてみたいと思います。

 

 それは決して「特別な世界」ではなく、日本人なら日常にしてもよい、「おいしく、きれいで、健康な」食なのです。そして、ひとつのおなべとフライパンでも、この世界の奥深さをたずねていけるものなのです。

 

 

テーマ3 旨味を願うこころ

 

 お料理とは、ひとつの食材から、可能な限りの旨味をひき出したいと願うこころ、ではないでしょうか?

 そして、それを、ひとさまに味わっていただきたい……もちろん自分も、です。(利休は、茶は、仏にそなえ、人に供し、われものむ、それがすべてだ、と言いました)

 

 洗う・煮る・こす・ひたす・焼く……すべては、そのものの旨味をひき出すこと。そして、その結果がうつくしく、食感に快いこと。

 

 3拍子そろえたいけれど、私は特に「うつくしさ」を言いたい。食が空腹と栄養のためだけならば、栄養剤をのめばよいのです。

 

 食は最高のコミュニケーションへの道です 。

 うつくしく焼くこつ。最高の食感に、こす術……そのノウハウを追いましょう。

 その追求は、決してあなたを裏切ることはないと思っております。